
さやか
さやか
……わたしはどうすればいいの?
誰かの期待に応えるなんて……ただの、言い訳だった……?
さやか
さやか
わたしの、3年間は……。
さやか
さやか
わたしが信じてきたものは……全部……
ただ誰かに寄りかかっていただけ……。
さやか
さやか
わたしが気付いたと思っていたものは、全部……全部、言い訳……。
さやか
さやか
竜胆祭……。
えな
えな
そっち持ってー!
ほら一年生、頑張れ頑張れ!

しいな
しいな
ちょっとそんな言い方!
びわこ
びわこ
あはは、一年生の時のわたしたちより頑張れてるよー。

泉
泉
溶融飛灰のような日々はまだ 期待に震えている
さやか
さやか
……。
泉
泉
おや、さやか先輩。
泉
泉
最近は中々会えなかったね。
さやか
さやか
わたしがあまり、学校にいなかったので。
泉
泉
そうか。 どうしてそんなに気落ちしているのかも気になるが……
実は私はこうして一対一で話す機会に恵まれて嬉しく思っている。
さやか
さやか
え?
さやか
さやか
言われてみれば確かに、ふたりでというのはあまりなかったですね。
泉
泉
ああ、そうなんだ。
泉
泉
最近のあなたを見ていて、聞きたかったことがあってね。
ただ……今のあなたの事情を聞きたくもあるな。
さやか
さやか
そこまで言ったのなら泉さんの話を先に済ませてくださいよ。
泉
泉
そうか。 では失礼して。
泉
泉
人のお世話が好きな人だと思っていたんだが、
それは向いているからやっているのだと小耳にはさんでね。
さやか
さやか
っ。
さやか
さやか
……おっしゃる、通りですよ。
さやか
さやか
わたしがやっているのは、何もかも、
ただ向いているからやっているだけです。
さやか
さやか
向いているから。
向いているものなら、誰かの期待に応えられるから。
泉
泉
誰かの期待に応える。
そのフレーズは、あなたからよく聞く言葉だ。
さやか
さやか
2年前にね。
さやか
さやか
わたしはやりたいことを探して、
誰かの期待に応えたいという答えに辿り着いたんです。
さやか
さやか
でもさっき、ようやく気付いたんです。
それは間違いだったって。
泉
泉
……気落ちした原因は。
さやか
さやか
誰かの期待に応えるとはしょせん、ただの言い訳。
さやか
さやか
わたしはただ、誰かの求めることをして……
自分がやりたいことをやっている気になっていただけ。
さやか
さやか
フィギュアスケートも……スクールアイドルも、
わたしに誰も期待しないのなら、やる理由が見当たらないんです。
泉
泉
そう、か。 そうなんだね。
さやか
さやか
はい。
泉
泉
私はね、さやかさん。 あなたを、私と似ていると思ったんだ。
さやか
さやか
ーー。
さやか
さやか
ああ……道理で。
泉
泉
?
さやか
さやか
あなたの歌が、今はより一層心に刺さる。
泉
泉
さやか先輩。 実は……
完全な同類だと思っていたなら、私はあなたと話したいとは思わなかった。
さやか
さやか
え?
泉
泉
スクールアイドルとしてのあなたには、
確かな輝きがあったよ。
泉
泉
それだけは間違いない。
だからこそ、私はあなたと自分の違いを知りたかったんだ。
さやか
さやか
そんなの……。
泉
泉
どうか、考えてほしい。 今言うことではないかもしれないが……。
泉
泉
私も……本気で答えが欲しいんだ。
私のような人間が……情熱を手にするために。
さやか
さやか
……。 この期に及んで、
さやか
さやか
あなたの期待に応えたいと思ってしまうのは、
本当にどうしようもないですね。
さやか
さやか
……わたしは。

さやか
さやか
やっぱり、お姉ちゃんはすごい……!
わたしはまだ、全然だけど……。
つかさ
つかさ
わたし、最強!!!
さやか
さやか
うん、ほんとに……
わたしはお母さんにがっかりされるかもしれないけど……って、あ!
さやか
さやか
お姉ちゃん、忘れ物ー!
つかさ
つかさ
ありがとさやかー。
またお母さんに怒られるところだったよー。
さやかみたいにしっかりしろーって。
さやか
さやか
……! えへへ。 まあね!
お姉ちゃんはもう、しょうがないんだから!
さやか
さやか
ああ……うん。
さやか
さやか
あなたは似ていると言ってくれたけれど、やっぱり違います。
わたしはただ、誰かに必要とされたかっただけ。
さやか
さやか
ただ……人に褒められることだけを求めて生きてきた。
……子どもの頃から、何も変わっていないんだ。
泉
泉
人に褒められたい。
でもそれは……正しくあなた自身の願いでは。 そういう熱も……。
さやか
さやか
でもその結果がこれです。
さやか
さやか
小鈴さんには偉そうに自分のやりたいことをやれと言っておきながら……
わたし自身はそれをせず、
さやか
さやか
ただ必要とされることで安心したかっただけ。
さやか
さやか
こんな人間に、フィギュアの道に進むことはおろか、
スクールアイドルを続ける資格さえーー。
泉
泉
必要とされたい。 要らないと思われたくない。
だから、人の期待に応えたい、か。
泉
泉
それは確かに、私とは違う。
さやか
さやか
……ね。
さやか
さやか
こうやって、泉さんの求めることに応えられなかっただけで、
けっこう……胸に来るんです。
泉
泉
……。
泉
泉
応えられなかったわけではないさ。
それに……変わらず、私はあなたが羨ましい。
さやか
さやか
羨ましい?
小鈴
小鈴
ちぇすとー!
泉
泉
私とあなたは違う。
でも、とてもよく似ているとも思う。
泉
泉
私にとって……彼女はあまりにも眩しい。
あなたにとってもそうだとも、思う。
さやか
さやか
眩しい……。
泉
泉
彼女は、私たちにないものを全て持っている。
泉
泉
そんな彼女と最も間近にいられるのは……やはり、羨ましいよ。
泉
泉
いや、羨ましかった、と言うべきかな。
今の私にも、セラスがいるからね。
さやか
さやか
……そうだ。
さやか
さやか
小鈴さんは、常に自分の発する熱で動く……。
泉
泉
誰かに熱を委ねることも、ない。
さやか
さやか
わたしみたいに誰かに必要とされることで安心するなんて……かけらも。
小鈴さんは……。
小鈴
小鈴
はあ……はあ……。
沙知
沙知
げ、現役の力は恐ろしいねぃ……。
小鈴
小鈴
沙知先輩……これで……これで、全部ですか……!?
沙知
沙知
ああ……!
沙知
沙知
小鈴! 試練は全て突破した!!
きみは次代の蓮ノ空を動かす心臓にすらなれるだろう!!
小鈴
小鈴
やったー! 流石は超先輩の修行!! 徒町、超絶パワーアップです!!
沙知
沙知
よくやったよ、小鈴。
小鈴
小鈴
はい!
小鈴
小鈴
沙知先輩のおかげで、これなら竜胆祭でもさやか先輩をーー。
さやか
さやか
小鈴さん。
小鈴
小鈴
さ、さやか先輩!?
小鈴
小鈴
さやか先輩!
徒町、頑張って特訓積みました!
小鈴
小鈴
きっと竜胆祭では、
さやか先輩が安心して卒業できるくらいのパフォーマンスをしてみせます!!
さやか
さやか
お願いがあります。
小鈴
小鈴
へ?
さやか
さやか
わたしとーー戦ってください。
小鈴
小鈴
たたか!?
泉
泉
ほう……?
小鈴
小鈴
え、な、なぜに……。
さやか
さやか
あなたと向き合うことが……
今のわたしには必要なんです。
小鈴
小鈴
それは、どういう……。
小鈴
小鈴
ひとつだけ、聞かせてください。 ……さやか先輩の気持ちは、
徒町が頑張れば、どうにかなるものなんですね?
さやか
さやか
……はい。
小鈴
小鈴
……分かりました!
さやか先輩が何を思っているのかは分かりません。
小鈴
小鈴
どうして徒町なのかも分かりません。
小鈴
小鈴
でもそんなことどうだっていいです!
小鈴
小鈴
さやか先輩が何かに手を伸ばしていて、
徒町がその一助になれるのなら。
小鈴
小鈴
不肖徒町小鈴、さやか先輩のその勝負……受けて立ちます!!
今の徒町がやれるすべて、見せつけてみせますよ!!

さやか
さやか
はあ……はあ……ふう……。
花帆
花帆
はい、おつかれさま!
さやか
さやか
え、花帆さん……?
瑠璃乃
瑠璃乃
ルリもいるよ。
さやか
さやか
どうしてここに。
花帆
花帆
聞いたよ。
小鈴ちゃんと正面切って対決するんだって?
瑠璃乃
瑠璃乃
そのための決戦前夜、って感じでしょ。
手伝いにきたよ。
瑠璃乃
瑠璃乃
よく分からないけどさ。 たぶん……
さやかちゃんが最近お世話我慢して頑張ってたことと繋がってる気がするし。
花帆
花帆
そーそー。
焚きつけたのはあたしたちみたいなところもあるしね。
瑠璃乃
瑠璃乃
まあうん、色々言ったからには、
最後まで付き合いたいかな。
さやか
さやか
……でも、おふたりも竜胆祭に向けてやることはたくさんあるはずでは。
花帆
花帆
何をいまさら。
あたしが同じ状況だったら、さやかちゃんだって駆けつけるくせに。
さやか
さやか
それは、でも、あまりよくないことで。
瑠璃乃
瑠璃乃
……言ったよね、さやかちゃん。
瑠璃乃
瑠璃乃
お世話は悪いことじゃないよ。
お世話も、ルリのヒーロー業も、全部誰かのためなんだ。
瑠璃乃
瑠璃乃
さやかちゃんがやりたいことを叶えるために、ルリたちはここにいるんだよ。
さやか
さやか
やりたい、こと……。
さやか
さやか
今わたしは、やりたいことをやっているのでしょうか……?
花帆
花帆
細かいことはあとあと。 もう早く受け取って!
さやか
さやか
わぷっ。
瑠璃乃
瑠璃乃
さ。 向こうにはルリたちに情報流した大倉庫の妖精がいるからね。
こっちも負けずに特訓しないと!
花帆
花帆
ね。 びっくりしたね。
さやか
さやか
……よろしくお願いします。
さやか
さやか
わたしはただ全力をもって……
小鈴さんの眩しさを、直接感じ取りたいんです。
さやか
さやか
小鈴さんにあって……わたしにないもの。
それが何なのかは分からないけど。
さやか
さやか
それが、欲しい……!!
瑠璃乃
瑠璃乃
よーっし! じゃあ始めよっか!
花帆
花帆
おー!