
泉
泉
……。

先輩
先輩
キミと一緒なら天下を取れるよ! わたしは!
一緒に天下を目指そうじゃないか!
泉
泉
ははは、なんだよそれ。

先輩
先輩
やったよ、泉ちゃん! わたしたち……やったんだ!
先輩
先輩
夢がーー叶ったんだよ!!
泉
泉
ああ……。 私たちで掴んだ、夢だ!

先輩
先輩
泉ちゃん、どうして……。
泉
泉
私はもう、あなたと共には、歩めない。
泉
泉
さようなら。

先輩
先輩
泉ちゃん!
先輩
先輩
泉ちゃん、ごめんね……。
先輩
先輩
あなたも、きっと……自分の夢を! 自分だけの夢を、見つけてね!

泉
泉
……先輩。
泉
泉
いったい私は……。
いつになれば、この呪いが晴れるんでしょうか。
泉
泉
それとも……あの時の決断は、間違っていたんですか? 先輩。
姫芽
姫芽
~!
泉
泉
……え?
姫芽
姫芽
いたぁ~!
泉
泉
……姫芽、ちゃん?
姫芽
姫芽
はぁ、はぁ……。 やっぱり、ここだった……。
泉
泉
どうして。
姫芽
姫芽
ふへへ……。 もし間違ってたらみんなを巻き添えにしちゃうから……
アタシひとりで、来ちゃったよ~。
姫芽
姫芽
事情は、せらりんから聞いたよ~。
蓮ノ空、辞めようとしてるんだって~?
泉
泉
……。 ああ。
姫芽
姫芽
ふぅん。
もう、決めたこと~?
泉
泉
そうだ。
姫芽
姫芽
じゃあ、しょうがないっかぁ~。
泉
泉
……私を連れ戻しに来たんじゃないのか?
姫芽
姫芽
戻ってくる気があるなら、そうするけど~?
泉
泉
……。
姫芽
姫芽
アタシは、まあ、それも仕方ないのかな~って思うよ。
事情は人それぞれ。
姫芽
姫芽
いずみんとは仲良くなれたから、寂しいのは同じだけどね。
どこに行ったって別に、ネットでは繋がってるわけだし。
泉
泉
……あなたは話が早くて助かるよ、姫芽ちゃん。
私とあなたは、最初からどこか、似ているところがあったから。
姫芽
姫芽
そ~だね。
姫芽
姫芽
ただ、せらりんは傷つくだろうね~。
泉
泉
……手遅れになるよりは、よっぽどいいさ。
姫芽
姫芽
その考え方も、間違ってないと思うよ~。
姫芽
姫芽
ただ、吟子ちゃんならこう言うだろうね。
『逃げるの?』って。
姫芽
姫芽
小鈴ちゃんなら、こう言うかな。
『きっとなんとかなるよ!』って、力強い笑顔で笑って、さ。
泉
泉
……なにが言いたいんだ、姫芽。
姫芽
姫芽
アタシの両親はね、
アタシが小さい頃にとっても遠いところに行っちゃったんだ。
姫芽
姫芽
優しくて、大好きだったお父さんとお母さんに、もう会えなくなって……。
毎日、ふさぎ込んでた。
姫芽
姫芽
そんなアタシを救ってくれたのは、
お姉ちゃんが買ってくれたゲーミングPC。
姫芽
姫芽
そのおかげで、また友達ができた。
たくさんの人と繋がることができた。
泉
泉
……それが?
姫芽
姫芽
でもね、去年。
どうしてもスクールアイドル活動がうまくいかなくて悩んだアタシは、
スクールアイドルのためにゲームを捨てようとしたんだよ。
姫芽
姫芽
どっちも中途半端になるぐらいなら、なにかひとつに打ち込むのが正解。
そう思い込んで、ね。
だけど結局、それも間違いだった。
姫芽
姫芽
ひとりで思いつめてるとね、見えるものも、見えなくなっちゃうんだよ。
泉
泉
……それでもあなたには、スクールアイドルが、あったんだろう。
泉
泉
私には、なにもない。
なにもないんだ。
姫芽
姫芽
そう思い込んでるのは、いずみんだけだよ。
泉
泉
誰かの夢に寄生することしかできない私は、あなたとは違う!
蓮ノ空に来た私の選択は、そもそもが間違いだったんだ!
姫芽
姫芽
だからぁ!
それが違うって言ってるんでしょ! 泉!
姫芽
姫芽
今でも思うよ、アタシは!
姫芽
姫芽
もしゲームを捨てて本気でスクールアイドル一本に打ち込めば、
もっとうまくいってたのかな、とか!
姫芽
姫芽
アタシがもっといい子にしてたら、お父さんともお母さんとも、
今も一緒にいられたのかな、とかさぁ!
姫芽
姫芽
だけど!
人生には、成功も間違いも、ない!
姫芽
姫芽
どんな不幸が襲ってきても!
ただ自分の選んだ道を正解にするために、毎日がんばるんでしょ!
泉
泉
だったら!
泉
泉
私はどうしてこんなに苦しいんだ!
なにひとつ、捨てたくなんてなかった! 先輩と演劇を続けていたかった!
泉
泉
だが、仕方なかったんだ!
だったらこれが正解だったって、そう自分に言い聞かせるしかないだろう!
泉
泉
あの時、他にも道があったのなら……私は、私は……。
泉
泉
あまりにも……救われないじゃないか……。
姫芽
姫芽
……泉。
姫芽
姫芽
『やりたいことをやれ』。
姫芽
姫芽
それが、アタシが蓮ノ空に入って教えてもらった、偉大な先輩方の言葉。
姫芽
姫芽
見てればわかるよ。
姫芽
姫芽
泉が蓮ノ空を離れたくないと思ってるのも、
スクールアイドルクラブの毎日を、楽しいと思ってくれてるのも。
姫芽
姫芽
アタシは、人の楽しいって気持ちに、敏感だからさ。
姫芽
姫芽
その気持ちを押し殺して、
誰かのために行動してる人は、ちょっと見過ごせないんだ。
姫芽
姫芽
それが友達なら、なおさら、ね。
泉
泉
あ……。
姫芽
姫芽
ねえ、いずみん。
姫芽
姫芽
アタシたち、まだ人生の半分も生きてないんだよ。
その中で、何百回も、何千回も間違ったって思うんだろうけどさ。
姫芽
姫芽
ゲームは、始まったばかりなんだよ。
姫芽
姫芽
最後まで、どう転ぶかなんて、ぜんぜんわかんなくない?
泉
泉
……人生をゲームに例える、あなたらしい言葉だ。
姫芽
姫芽
だからね。 諦めちゃダメなんだよ。
ぜったいに、自分のことだけは。
姫芽
姫芽
去年、竜胆祭の後で、いずみんに言われたよね。
アタシは肝心なときに人に気持ちをぶつけることができないって。
姫芽
姫芽
あのときは、すごく悔しかった。
お前にアタシのなにがわかるんだ~、って思ったよ、正直。
姫芽
姫芽
だけど、それだってほら、乗り越えられた。
姫芽
姫芽
どんなに今がつらくても、苦しくても、
かじりついてさえいれば、どこかできっと逆転できるんだ。
姫芽
姫芽
それが、人生ってゲームだと、アタシは思う。
姫芽
姫芽
少なくともアタシは、その気持ちで生きてきたよ。
今も、生きてる。
姫芽
姫芽
最後に勝つまで、何度だってチャレンジできるんだよ。
気持ちさえあれば、ね。
泉
泉
それは、どうすれば最後に、勝ったって思えるのかな。
姫芽
姫芽
そんなの、決まってるっしょ~!
姫芽
姫芽
『楽しかった』ってそう思えたら、全員ウィナー!
大勝利だよ~!
泉
泉
……そうか、『楽しかった』って、そう思えたら、か……。
泉
泉
そうか……そうか。
泉
泉
私はきっと、心のどこかでこう思っていたんだ。
こんな自分が救われるべきではない、と。
泉
泉
先輩の夢を奪った私を、私自身が許せなかった。
泉
泉
ずっと……世界を灰色に見せていたのは、私の目だ。
私がこの世界を、拒絶したんだ。
泉
泉
どうりで、空っぽなわけだ……。
泉
泉
姫芽。
ようやく、私のやるべきことがわかったよ。
泉
泉
私は、自分で自分を救わなければ、ならなかったんだ。
泉
泉
本当にリベンジするべきは、去年、夢を叶えられなかったことではなく……。
最初に心を閉ざしてしまった私自身だ。
泉
泉
どんな不幸に心を歪められたとしても、諦めず、
私自身の光に、手を伸ばさなければならなかった。
泉
泉
しっかりと自分の気持ちに寄り添い、正面から向き合って……。
泉
泉
そうして、私だけの道を見つけ出し、
これが正解だと信じて、進むしかなかったんだ。
姫芽
姫芽
……うん。
姫芽
姫芽
もし迷って、なにも見つからなくて、不安になったそのときはね。
いつだって誰かがそばに、いてくれるんだから。
姫芽
姫芽
『あなた自身を信じてあげて』って、そう言って、背中を押してあげるために。
姫芽
姫芽
アタシや吟子ちゃん、小鈴ちゃん。 かほせんぱい、さやかせんぱい、
るりちゃんせんぱい。 学校のみんな、そして。
姫芽
姫芽
セラスちゃんが、ずっと、そう叫んでくれてたんだから。
泉
泉
……ああ。
そういう意味だったのか……。
泉
泉
スクールアイドルを好きにさせるということは、すなわち。
泉
泉
ありのままの桂城 泉を、
どうしようもなく肯定する言葉だったんだな……。
泉
泉
ありがとう、姫芽ちゃん。 みんなに伝えてくれ。
私には、やることができた。しばらく蓮ノ空には戻れない、と。
姫芽
姫芽
……どうするつもり~?
泉
泉
もう一度、先輩に会ってくる。
姫芽
姫芽
……!
泉
泉
そして、向き合うんだ。
泉
泉
どんなに罵声を浴びせられようが、突き放されようが。
そうしなければ、私は前には進めない。
泉
泉
過去を乗り越え、この目を開く。
先輩に預けた夢を、色彩を……人生を、取り戻すんだ。
泉
泉
これが私の、最後のリベンジだ。
泉
泉
行ってくるよ。
私自身を、救うためにーー。