
小鈴
小鈴
きょうも雨、だね。
吟子
吟子
それに、泉が学校を休んでから、もう、5日。
一応『心配しないように』ってメッセージは来たけど……。
小鈴
小鈴
ね、姫芽ちゃん。
昔の先輩に会いに行くって、大丈夫なのかな。
姫芽
姫芽
ん~……。
吟子
吟子
もしかして、そのまま演劇界に復帰したり……。
吟子
吟子
それに……泉がいなくなっちゃったら、
今、検査で実家に戻ってるセラスだって、
もしかしたら来年、瑞河に……。
姫芽
姫芽
吟子ちゃんは心配性だねぇ~。
姫芽
姫芽
……きっと、大丈夫だよ。
吟子
吟子
え?
小鈴
小鈴
姫芽ちゃん?
姫芽
姫芽
なんとなく、なんとなくね。

泉
泉
……やあ、久しぶり。
セラス
セラス
え? 泉……?
泉
泉
海莉さんから聞いてね。
あなたとここで待ち合わせしている、と。
セラス
セラス
……。 この5日、なにしてたの。
……心配、してたんだよ。
泉
泉
姫芽ちゃんから聞いたんだろう。
かつて演劇を一緒にやった先輩を捜していた、と。
セラス
セラス
……聞いたけど。
会えたの?
泉
泉
ああ。
泉
泉
懐かしいね。
あなたと初めて会ったのも、こんな雨の日だった。
セラス
セラス
……ねえ、泉。
セラス
セラス
長野の病院で一応、検査を受けたけど……結果は問題なしの、健康優良児。
だから、泉の思う通りには、ならないよ。
泉
泉
……それは、なによりだ。
セラス
セラス
それでね、わたしも、いろいろと考えたんだ。
泉がいなくなってる間。
セラス
セラス
それでね……。
泉
泉
その前に、私の話を聞いてくれないかな。
セラス
セラス
……ん。
……わかった。
泉
泉
ありがとう。
泉
泉
先輩はね、演劇を続けていたよ。
泉
泉
体は治り切ってはいないようだったけれど、今度はちゃんと、
自分のペースでね。 新しい仲間たちと一緒に、楽しそうに過ごしていた。
泉
泉
お礼を、言われてしまったよ。
セラス
セラス
……。
泉
泉
私があのとき止めてくれたから、今の自分がある、って。
泉
泉
……おかしいだろう。
泉
泉
私は『どうして自分を捨てたのか』と、怒鳴られることも承知の上で、
会いに行ったというのに。
泉
泉
それから、いろんなことを話したよ。
先輩と離れてから、私の世界はずっと灰色になってしまったこと。
泉
泉
空っぽの私は、誰かの夢を叶えることでしか、情熱を感じ取れなかったこと。
ずっと、空虚な想いを抱えていたこと。
泉
泉
そう話すとね、また誘われてしまった。
もう一度、演劇をやらないか? って。
泉
泉
今度は、小さな夢だった。 自分の手の届く範囲、大好きな仲間と一緒に、
自分が最高だと思える劇を完成させたい。
泉
泉
昔みたいに、夢の頂を目指すわけじゃないけれど、
だからこそ、私にも一緒に来てほしい、と。
セラス
セラス
泉は。
セラス
セラス
……なんて、答えたの?
泉
泉
……そうだね。
それも、いいかもしれない、って。
泉
泉
私がずっと自分を呪い続けていなければ、
きっと、そういう未来もあったんだろうな、ってさ。
泉
泉
でも私には、新しい夢が、できたから。

先輩
先輩
そっか……そっか!
泉
泉
……どうして、そんなに嬉しそうなんだ?
先輩
先輩
だって、見つけられたんだね、泉ちゃんは。
先輩
先輩
新しい夢を……自分だけの、夢を!
泉
泉
……違うよ、先輩。
これはもう、私だけの夢じゃない。
先輩
先輩
え?
泉
泉
これはねーー。

泉
泉
セラス。
あなたがくれた、私の夢だ。
泉
泉
スクールアイドルという、私の夢だ。
泉
泉
あなたがいなければ、私は前に進むことはできなかっただろう。
そして、スクールアイドルを好きになることもなかった。
セラス
セラス
それじゃあ、泉……。
泉
泉
ああ。
泉
泉
先輩との日々は、本当に、楽しかったんだ。
ようやく、思い出せた。
泉
泉
どうして、呪いなどと思っていたのだろう。
あんなに、楽しかったのに……。
泉
泉
ようやく私は、彼女との思い出に、決着をつけることができた。
泉
泉
ここからまた、歩き出すんだ。


泉
泉
斯くありてーー。
泉
泉
あどけなき姫君の願いは、星々の下、ついに結晶し。
今ここに物語は春の凱歌を奏で、歓喜の終幕をーー迎えたり!
泉
泉
我が騎士にして、パートナー。 セラスよ。
泉
泉
すべて貴女が、叶えてくれたんだ。
ここまでの旅路……真に、大儀であった。
セラス
セラス
泉……。
泉
泉
……少し、気取りすぎだったかな。
セラス
セラス
……ううん。
嬉しいよ。 ほんとに……すごく。
セラス
セラス
ありがとう。
スクールアイドルを好きになってくれて、ありがとう。
セラス
セラス
わたしが泉の夢を、叶えたんだね……。
泉
泉
私はまだスタートラインに立っただけだ。
泉
泉
自分だけの確かな情熱を見つけるために、
これから途方もない時間がかかるかもしれない。
泉
泉
なんだってすぐにできるようになると言われたこの桂城 泉が、だ。
泉
泉
だけど、自分自身で掴もうともがき続ければ、
きっと見つけられると信じている。
泉
泉
あなたとの日々があったから。
泉
泉
スクールアイドルという夢を見るあなたは、誰よりも輝いていた。
その光を浴びて、私ももう一度、自分を信じてみようと思えたんだ。
泉
泉
こんな私が、スクールアイドルを好きになれたんだから。
きっと、なんだってできるんだ。
泉
泉
あなたはきっと、これからも大勢を救い続ける。
どうか、夢を見せてあげてほしい。
泉
泉
私もあなたを、ずっと、想い続ける。
セラス
セラス
……うん!
セラス
セラス
ねえ、泉。
セラス
セラス
ずっと悩んで、迷って、これでいいのかなって思ってた。
セラス
セラス
だけど……あなたの言葉で、わたしも、ようやく前に進む勇気ができた。
とても大きくて、途方もない夢だけど……新しい夢が、できたんだよ。
セラス
セラス
わたしの救った泉が、わたしの背中を、押してくれたんだ。
セラス
セラス
これから海莉に会うの。
わたしの決意を、一緒に、聞いてくれる?
泉
泉
もちろんだとも。
私のお姫様でもなく、私の騎士でもないーー。
泉
泉
私を救ってくれた、友人であるあなたの言葉を、
誰よりも尊重するよ。


泉
泉
……おや。

姫芽
姫芽
いずみ~ん!
小鈴
小鈴
おかえりなさい!
吟子
吟子
まったく。 ようやく帰ってきた。

泉
泉
あなたたち……。
どうして、こんなところで。

花帆
花帆
みんな、待ってたんだよ!
ふたりが帰ってくるの!
さやか
さやか
ですから、お出迎えです。
瑠璃乃
瑠璃乃
っていうか、セラスちゃん、どうしたの!?
もしかして、また!?

セラス
セラス
……。
泉
泉
ああ、いや。
これは、ちょっと疲れてしまったみたいでね。

瑠璃乃
瑠璃乃
変わろっか?

泉
泉
ふふ、平気さ。
ありがとう、瑠璃乃先輩。

姫芽
姫芽
で、これからどうするつもり~?

泉
泉
とりあえず、お風呂に入りたい気分ではあるかな。

吟子
吟子
そうじゃないでしょ!

泉
泉
はは、わかってるよ。
泉
泉
この度は、心配をかけて、申し訳なかった。
本当に、すまない。 謝罪で済むとは思っていないがーー。

小鈴
小鈴
ーーそうでもなくて!
泉
泉
え?
小鈴
小鈴
どうするの!? セラスちゃんと、泉ちゃんは!

泉
泉
……ああ。
泉
泉
ちゃんと、これからも続けるよ、スクールアイドルを。
この、蓮ノ空でね。
泉
泉
もちろん、あなたたちが許してくれるなら、だけれどーー。

花帆&瑠璃乃
花帆&瑠璃乃
やったぁー!
さやか
さやか
許すもなにもありませんよ。

さやか
さやか
あなたたちはずっと蓮ノ空の生徒で、
そしてわたしたちスクールアイドルクラブの仲間です。
さやか
さやか
それが揺らいだことなど、一度もありませんから。

泉
泉
……そうか。

吟子
吟子
……よかったぁ…………。
小鈴
小鈴
うん、うん、よかった、よかったね!
姫芽
姫芽
めでたしめでたしだね~。

吟子
吟子
姫芽、実はなにか知ってたんじゃないの?

姫芽
姫芽
ええ~?
アタシは吟子ちゃんに隠し事なんて、一個もないよ~?

吟子
吟子
でも姫芽はごまかすのうまいし。

泉
泉
……姫芽ちゃんも、本当にありがとう。

吟子
吟子
ほら!?
姫芽
姫芽
~♪
小鈴
小鈴
あはは。

泉
泉
……ああ、光だ。
泉
泉
……いつか、私もなれるかな、その光に。

セラス
セラス
……泉が気づいてないだけ。
セラス
セラス
最初から、わたしにとって……泉は、希望の光だったよ。
泉
泉
……ふ、そうか。
セラス
セラス
…………なんて、言ってみたり。
泉
泉
ところでセラス。
泉
泉
起きていたんだったら、自分の足で歩いてほしいな。
それとも、甘えん坊なお姫様はそんなに私の背中が気に入ったのかな。
セラス
セラス
な!?

吟子
吟子
え~? セラス、赤ちゃんみたいだね~?
小鈴
小鈴
徒町も、抱っこされるの好きだったよ! 幼稚園ぐらいまで!

セラス
セラス
!?
セラス
セラス
お、下ろして! 今すぐ下ろして! 泉!
泉
泉
そうだ、ちょうどいい。
みんなに言っておきたいことがあるんだ。
セラス
セラス
泉! こら! 悪魔! 聞いてるでしょ!
泉
泉
Edel Noteが解散した、来年以降のことだ。


姫芽
姫芽
お~?

泉
泉
私はこれからもスクールアイドルを続けたい。
だが、誰にも寄りかからず、自分の力でやってみたいんだ。

さやか
さやか
というのは?

泉
泉
だからね、さやか先輩。
私はこの蓮ノ空で、ソロのスクールアイドルになるよ。

花帆&瑠璃乃
花帆&瑠璃乃
ソロ!?

セラス
セラス
それって……。
泉
泉
違うよ、セラス。 誰かを巻き込むと不幸にしてしまうとか、
今度はそういう後ろ向きな理由じゃない。

泉
泉
あなたたちひとりひとりが胸にもつ光を、私も自分自身で見つけたい。
誰かに見出してもらうだけじゃ、駄目だと気づいたんだ。
泉
泉
時には壁にぶつかるかもしれない。何度でもつまずくかもしれない。
もしかしたらこの決断は、賢い選択ではないのかもしれない。
泉
泉
それでも、懸命に、愚直に前に進もうとする私の姿を、
あなたたちに見ていてほしい。

泉
泉
いつかのさやか先輩のように。 途方もない夢を掲げた花帆先輩のように。
自分が変われるのだと信じて行動した瑠璃乃先輩のように。

泉
泉
そして、こんな私を仲間と認めてくれた104期生のみんなのように。

泉
泉
私もこのスクールアイドルという輝きのひとつに、なれるように。
あなたたちと肩を並べて……そう、がんばってみたいんだ。

泉
泉
セラスが私を、救おうとしてくれたように。

泉
泉
できるかどうかはわからないけれど……
私も自分の手で、自分の花を咲かせてみたい。
泉
泉
……もちろん、蓮ノ空の伝統に反する申し出であるということは、
重々承知の上だ。

泉
泉
誰かひとりでも快く思わない人がいるならば、私はこの言葉を取り下げよう。
あなたたちは皆、私の恩人であるのだから。

泉
泉
……どう、だろうか?


瑠璃乃
瑠璃乃
ほら、花帆ちゃん。
さやか
さやか
花帆部長。 あなたの出番ですよ。

花帆
花帆
うん!
花帆
花帆
泉ちゃん! あたし、いいと思う!
花帆
花帆
泉ちゃんのやりたいこと、ぜんぶやって、そして!
花帆
花帆
みんなで一緒に、いーっぱい、花咲こうね!!

泉
泉
……ありがとう、花帆部長。

セラス
セラス
泉……。

さやか
さやか
……わたしと同じように空っぽだと言った、
そんなあなたが選んでくれた生き方を、歓迎します、泉さん。
さやか
さやか
この蓮ノ空に、あなただけの花を、咲かせてください。

泉
泉
ありがとう、さやか部長。
それに、みんなも……ありがとう。

泉
泉
これで、Bloom Garden Partyは私たちの解散公演であり、
そして、私たちの新たな夢の一歩になったね、セラス。
セラス
セラス
……うん!

瑠璃乃
瑠璃乃
来月には、Starring Bloomだしね!
やるぞー、みんなー!

吟子&小鈴&姫芽
吟子&小鈴&姫芽
おー!

泉
泉
ふふふ。
セラス
セラス
いぇ~い!